「競り休み」
毎週土曜日は原則競り休みで、水揚げがありません。 火曜日に関しても、不定期に競り休みとなります。
また年末年始(例年12月30日〜1月5日頃)も休漁となります。 これら制度上の休みに加えて、シケによる出漁不可や、乗組員の休養の必要などもあり、決して毎日カニが水揚げされている訳ではありません。
 
「相場(値動き)」
カニの価格は毎日変動します。
シーズン全体で見ると、安値時と高値時で数倍の価格差があります。
カニに限った事ではありませんが、値動きの主な要因は、需要と供給のバランスです。
良い品物でも、供給過剰になれば信じられない安値となりますし、逆にシケなどで数日水揚げがストップしてしまうと、悪いカニでもとんでもない高値となります。

・11月
前シーズン終漁(3月)からカニ漁が行われておらず、カニの資源量(生息数)も多いため、出漁1回あたりの漁獲数は多くなります。
また天候も安定する事が多いため、出漁回数も増え、それに比例して水揚げも多くなります。
一方で、まだ暖かく本格的なカニシーズンとは言えないので、卸売り、小売り共に需要はそれほど多くありません。
結果的に「供給過剰」となり、例年11月は安値で推移し、中旬にシーズンの最安値となるケースが大半です。

・12月
御歳暮の需要が一気に増え、加えて飲食店、旅館等への卸売りも急増します。
対してカニの水揚げは、11月に好漁場に軒並み網が入っているため、漁を行っても思うようにカニが獲れなくなっていきます。
さらに冬型の気圧配置(西高東低)となる日が多くなり、シケで出漁できない日が出てきます。
需要が急増する一方、供給は不安定。 11月とは対照的に「供給不足」となり、日に日に値上がりしていき、ピークを迎えるのが年末年始です。
正月期間の需要に対して、年末年始は休漁となり供給が止まります。 そのため休漁直前の12月末には、とにかく値段は二の次、カニを確保するのが最優先となり、11月の数倍の価格へ高騰する事になります。
これは「競りの仕組み」も一因となります。 競りはオークションと同じく、最高値を付けた仲買人が、その品物を落札する仕組みです。
例えば、私があるカニに値を付けても、他の仲買人がそれ以上の値を付けると、私は落札できません。 落札するには、更に高値を付ける必要がありますが、それで相手が降りてくれるとは限りません。 互いに一歩も引かず、高値に高値を返していく「付け合い」という状態になり、うなぎ登りに値上がりする訳です。
こういった、ある意味「無理な買い方」をしても、結局は売値が高くなるだけで、お客様には不利益でしかありませんが、どうしてもこのカニが欲しい、後に引けないという場合もあります。
また競り値が高騰していくと、競り全体が感情的な雰囲気に包まれ、互いがむやみやたらと値を付け合う、不毛な争いの場と化すケースもありますね。
例年、シーズンで最も高値となるのが年末の競りです。 (※初競りの御祝儀相場を除く)

・1月〜2月
年末年始で需要のピークが過ぎ、ジワジワと値下がりしていく時期です。
値下がりとはいえ、11月の安値時まで下がる事はまずありませんが、この時期は気温、水温共にシーズンで最も低く、カニの鮮度が最も良い時期でもあります。
懸念されるのは、12月同様シケに見舞われる事が多く、時に1週間ほど水揚げが止まる事も珍しくありませんので、その場合は一気に反発して高値となってしまいます。

・3月
シーズンも終わりに近づき、需要は低調です。 天候さえ安定していれば、終漁まで安値基調で推移し、この時期に最安値となった年もありました。
ただ、近年は2月中旬頃からホタルイカが獲れるようになり、出だしは非常に高値となることから、底曳き船のなかにはホタルイカ漁へシフトする船も出てきています。
そのためカニの水揚げが減り、これまでのようには安値にならないのが最近の傾向です。

「まとめ」
ざっくりとした流れですが、

解禁日(初競り)の御祝儀高値

11月中旬に最安値

11月下旬から右肩上がりに高値

年末年始に高値のピーク

1月〜3月 緩やかに値下がり

このような傾向となります。
ただ、上に長々と書きましたように、シケ等による急騰&急落は毎年必ず起こりますし、これを月単位の長いスパンで正確に予測するのは何年競りに立っていても不可能です。
また、シーズンで最安値の時にカニが欲しいという要望をいただく事もありますが、長期的な値動きのなかで「今日は安い」とは言えるものの、果たして今日が底値なのか?あるいはこの先、更に値下がりするのか?は断言できません。
私は株の取引は素人ですが、高値の山・安値の谷も通り過ぎてから気付く方が多いのではないでしょうか? 登りか下りかは判断できても、ピークがどこなのか見極めるのは容易でないと思います。
私にできるのは、競り場でカニを目利きし、品質に対してどのくらいの価格が「妥当」なのかを判断する事。そして、短期的な水揚げ&相場見通しを立てる事です。
高値の時などは、精一杯頑張っても、価格に見合わない悪いカニしかご用意できない事もあります。
あるいは1匹が5万円〜10万円という、恐ろしい値段になってしまう場合もあります。
時価商品だから仕方がないというのも一つの考え方ですが、品物の対価として妥当な価格かといえば、私はそうは思いません。 そういう時には「今、買うのはやめて下さい」とお伝えしています。
逆に良品が安値で仕入れできた際には、自信を持ってお勧めします。
漁師が怒るような値段で買い叩いた品物や、1匹が10万円越えるような法外な品物は、当店には並びません。 繰り返しになりますが、品質に対して妥当な価格の品物を、お客様にお届けしたく競りに臨んでいます。